今月の新書案内

2019年7月の筑摩書房の新書案内

2019年7月のちくま新書 7冊

PICK UP!!
『露出する女子、覗き見る女子-SNSとアプリに現れる新階層』三浦展・天笠邦一

~格差はスマホの中にある

Facebook,Twitter,Instagram,マッチングアプリにYouTubeのライブ配信、ネット検索…
現代に生きていれば、若者に限らず誰もがメディア・コミュニケーションツールと無関係ではいられない時代ではないでしょうか。

スマホやパソコンの中では、誰もが憧れるような充実した日常が切り取られ、貼り付けられています。
点と点のようにちりばめられた静止画も、何十枚と重なるうちに線となり、そしてスト―リーが作られていく。

発信する者と受信する者、それは必ずしも固定されてはいないでしょう。どちらかと言えば他者の受信が原点となって発信の意欲が湧いてくることが多いのが事実です。

ある者にとって、それは情報であり、ステータスであり、コネクションであり、ときめきであり、幸福であり不幸である。画面一枚隔てた向こうで、その格差は始まって行くのです。

今やネットと現実が必ずしも同一ではなく、その間には溝があることも多くなりました。ましてや女性であれば、その差を含んでのSNSであることは承知の上です。

その上で、あえて女性達はSNSを選びとって利用しています。それは自らをカテゴライズしながら、所属階層を選択しているとも言えます。

  • Facebook女子…Facebookを利用する社会的経済的に安定したバリキャリ女子
  • ストーリー女子…インスタを活用して幸せストーリーの露出・発信をする女子
  • ライブ女子…YouTube等で自らを前面に露出してオリジナルな世界を生み出そうとする
  • 検索女子…Twitterで検索をし続けるが、こじらせ系とイノベーター系がある
  • 閲覧女子…他人のインスタを、批判的な目でにひたすら閲覧し続ける女子
  • アプリ女子…金融系、ゲーム系、占い系、マッチング系、情報系など

本書は利用するSNSやアプリを分析することにより、多様な女性像が浮かび上がるユニークな視点で描かれています。
あくまでも、利用するSNSでステレオタイプに決めつけることは出来ませんが、細かなアンケートの集計から見えてくる彼女達の本音はそう大きく外れているとも思えません。

本書の分析で見えてきた女性の「自信」と「自己効力観」の不足は、これからどうなっていくのでしょうか。
自尊心と自己肯定の低さも含めて、ネット越しに彼女達はいつも不安と闘っているように感じられます。

そんな環境の中で自らを鼓舞して生きる為のツールとして活用しているのがSNSであり、アプリなのではないでしょうか。

SNSは可視化されやすい「見える努力」の「表現の場」であるといえます。
それぞれを棲み分けながら自分に合った形で自らの努力や能力を認識して効力感を獲得する場として活用するならば、SNSは新たな成長のエンジンとして利用できる可能性を秘めていると言えるでしょう。

『植物はおいしい-身近な植物の知れらざる秘密』田中修

~ミカンの「瓤囊」何て読む?どの部分?誰かに話したくなる話題がいっぱい~

私達が毎日何気なく食べている、野菜・果物・穀物についての知られざる雑学を、植物博士である著者がわかりやすく、季節(旬)ごとに紹介しています。

・なぜキウイのゼラチンゼリーは作りにくいのか
・なぜイチゴは種から栽培しないのか
・ミカンの皮をむかなくても房の数はわかるか
・ラッカセイが土の中に豆を作るのはなぜか
・白菜の黒い斑点は何か

誰にとっても関係のある食べ物の話題は、「すごい」「おもしろい」「ふしぎ」と感じる”万能の雑学”です。ぜひ会話の「おいしいエッセンス」として活用したい一冊です。

『明智光秀と本能寺の変』渡邊大門

~なぜ信長を殺さねばならなかったのか。謀反人の謎の生涯を探る!

本能寺の変は、日本史上最大のミステリーであると言われています。
謎が多いのは本能寺の変だけではなく、実は「明智光秀」本人も。

光秀の生涯に関して明らかなのは、後半生の十数年に過ぎません。
どこでいつ生まれたのかもはっきりせず、若い頃の姿は後世に成った資料にしか現れないことを皆さんはご存じでしょうか。

なぜ光秀は織田信長を討ったのか?
下剋上の世の中とは言え、戦国の覇者である主君への謀反はあまりに大きく、謎が多い。
本人の経歴もはっきりしないために、余計秘密めいて様々な憶測がされているのが現状なのです。

信長への私怨か、朝廷側につくか足利義昭側につくかの迷いか、或いは家康の陰謀説か…?
光秀「知将」の人生をたどりながら歴史学者の著者と共に、秋の夜長を戦国ミステリーに費やしたい。
とても興味深く、どんどん内容にひきこまれます!

『川上から始めよ-成功は一行のコピーで決まる』川上徹也

~「理念」なくして「成功」なし

著者はTCC新人賞・広告電通賞・ACC賞など広告界で多数の受賞歴のあるコピーライター。「物語で売る」という手法を体系化し「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発しました。

そんな著者が、企業の経営、マーケティング、プロジェクト、リーダーシップなどにおける考え方『川上』の重要性と、成功に繋がるコピーの作り方と生かし方について解説しています。

ここで言う「川上」とは経営の源流を意味し、その後キャッチコピーが、「川中」「川下」にどのような成果を及ぼすかが見所です。
GAFA・スターバックス・マイクロソフト・アポロ計画・箱根駅伝・乃木坂46…といった著名な例を挙げて説く理念は、コピーライターの世界のみならず、一般読者の実生活にも取り入れることが出来る成功の秘訣となるでしょう!

『アフリカを見る アフリカから見る』白戸圭一

~それ、いつの時代のアフリカ観?

「平成」の三十年間でアフリカを取り巻く状況は激変した。
そこには、もはや「経済後進国」と呼ばれていた面影はありません。

かつて日本人が哀れみの視線で援助していたアフリカは、多くの国で経済成長が持続し、平和と民主主義の定着が進んでいます。

一方、こちら日本はどうでしょうか?
経済成長は止まり、国力は低下、少子高齢化に喘いでいるのが現状です。

「援助対象地」ではなく「投資対象地」として世界の注目を浴びるていることを自覚する“豊穣の大陸”アフリカに、いま日本はどのように向き合えばよいのでしょうか。
アフリカとの関係構築に日本再生の手がかりを「アフリカに潜む日本の国益とチャンス」をキーワードに読み解きましょう。

『世界最強組織のつくり方-感染症と闘うグローバルファンドの挑戦』國井修

~三大感染症と闘う国際ファンド 戦略局長が語る鉄壁の組織論~

1990年代に猛威を振るったHIV、結核、マラリア。それら三大感染症と闘うために生まれ、世界各所から絶大な支援を受けてきた“国際基金「グローバルファンド」”。
放置すれば世界をも滅亡させてしまう感染症に立ち向かうには世界最強の国際組織が必要でありました。

これが莫大な資金を必要とする機関であることは、容易に想像できるでしょう。
先頭で設立の呼びかけをした元国連事務総長のコフィ・アランや、元マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツや世界的ロックバンドU2のボノなど多くの人々の絶大なる支援を受けている組織が「世界エイズ・結核・マラリヤ対策基金」通称“グローバルファンド”です。

その官民共同のビジネスモデルは「二十一世紀のグローバルヘルスの大いなる革新」と呼ばれ、『世界最強の国際機関』とも称されています。
本書では、現・戦略局長として日々グローバルに活躍する著者が、世界最強の組織の条件を、自らの体験をもとに解き明かします。

この組織の挑戦を知ることにより、営利・非営利に関わらず、大きなミッションを担って動いている組織、大きなゴールに向かって走っている機関は、いくつかの示唆を受け取ることが出来るでしょう。
また個人であっても、有償活動・無償活動について深く考える良いきっかけとなるに違いありません。

『習近平の中国経済-富豪と効率と公正のトリレンマ』石原亮一

~凋落か?飛躍か?米中の覇権争いの中で日本の進むべき道を探る

改革開放の開始から40年、いま中国経済は重大な転機を迎えています。

アメリカとの貿易戦争と成長の鈍化。
現中国政権下では、富強と効率と公正という“三すくみ”で改革が踏みと惑っています。
習近平政権の下で、今後の中国が更なる飛躍を遂げ国民統合と社会の安定が進むのか、それとも各種の社会経済的矛盾が激化して社会の混乱や政情不安をもたらすのか…。

これまでも近代化を目指す中国市場経済の中での食の安全の規範の確立や、農民・農村・農業が直面する「三農問題」、国内の民族問題に向けて取り組んできたものの解決するに至れない現状があります。

そこに来て、対外経済問題です。
米中のIT企業をめぐる争いや貿易摩擦はつまるところ世界におけるハイテク産業・安全保障戦略の主導権争いでもあるわけですが、もはや巨大市場である中国が世界で重要な国家のひとつであることー「富強」であることの証明ともいえる現象です。

内外にまだたくさんの課題を抱える中国ではありますが、日本も世界経済の中で貿易であれ人的交流であれ、中国とうまく関わっていかねばなりません。
これからは同じ方向を向き、新たなワールドビジョン・アジアビジョンをみつめた関係になるべきであろう、という著者の意見をじっくりと聞いてみませんか?

2019年7月のちくまプリマー新書 2冊

『はじめてのギリシア神話』村松一男

~なぜ、どんな風に成立したか。ここは魅力的なキャラクターの宝庫!

12の職業を克服してスーパーヒーローになったヘラクレス。
親友の死をきっかけにトロイ戦争に駆られた英雄アキレウス。
人を家畜にする魔法で怖れられたキルケ。
現代人をも魅了する神々を紹介しながら、神話の生まれた世界の地理と風土、そして神話を育んできた歴史の背景を探ります。

ギリシア神話の内容の豊かさ、そこから派生する絵画や彫刻などの芸術作品の豊富さと素晴らしさを見れば、過去から現在に至るまで世界的な人気の高さがわかります。
しかし、実は内容まではよくわからないという人も多いのではないでしょうか?

本書ではそのような神話に触れる機会のなかった人に対して、初めての講義のようにわかりやすく説明されています。
ギリシア神話の魅力とその意義について、あなたも学んでみませんか。

『宇宙はなぜ 哲学の問題になるのか』伊藤邦武

~いちばんやさしい哲学入門

「宇宙に果てはあるのか?」
「広大な宇宙の片隅に住む私たちとは何者なのだろう?」
誰もが一度は囚われる、こうした問題。
プラトンもウィトゲンシュタインも、その哲学の原点は宇宙への問いでした。

哲学という思考の営みは、「何となく自分自身を越えた、何か非常に大きい、とてつもなく深い世界」について感じる、素朴でミステリアスな感情と密接に結びついています。
哲学は毎日の現実を見つめる一方で、とてつもなく大きな宇宙全体という極限の世界のことも同時に意識し、現実世界を宇宙地に関係のもとで考えようともするのです。

「わたし」を核に考え出すと、「命」や「生」へつながります。そうしてその起源へと思いを馳せると、いつしか「生命の誕生」から万物の進化の源である「宇宙」へと問題関心がうつろいでいくのです。

古代ギリシア哲学から現代哲学までそれぞれの時代の世界観を振り返りながら、宇宙を切り口に学ぶ哲学入門書です。