コロナウィルス対策による全国的な休校が続く中、子供たちの間に教育格差が生まれているのではという声が上がっています。
「子ども達の学びの補償」と文科省が提唱する声は、現場にはなかなか降りてきていないのが現実です。
今回は”決断の早さ”の視点で、公立校と私立校に教育格差が生まれ始めているという意見を取り上げて紹介したいと思います。
自治体の格差が生まれている
学校再開の時期の差
GW明けの週末、47都道府県中29の都道府県が休校中のままになっています。
これを多いとみるか、少ないとみるか?は、なかなか難しい問題です。
休校中の数字をとりあげると休校中が多いように聞こえるのですが、逆に言えば残り18県は学校再開に踏み切っており、その数は実は日本の4割にあたります。
これは日本全体で考えると、かなり大きな差になるのではないでしょうか?
そしてまた現在休校中の自治体は、東京・大阪などの政令指定都市を中心とした都市部に集中しています。
ということは一般的に見て、人数の多い地域の生徒達が学校に通えていないということなります。
人数が多いところに、ふり幅の差が生まれます。ですから今回休校中の地域を考えても、どうしても格差が発生することになるだろうと予測されます。
自治体の教育環境の差

今回、図らずも露呈してしまったのは、自治体ごとのGIGA構想への対応の差です。

2022年までの5年計画とされていたので、時期も悪かったのかもしれません。
4月からの新年度予算で、PC環境やデバイスの手配を考えていたところも多かったと思われますが、世の中の動きが止まった2月末の時点で全手配が完了していたところは半分もなかったようです。
例えば4月初旬にすでにオンライン授業が可能になっていた横浜市では、紙媒体のプリントも必要ないほどICT教育環境が整備されていました。
その一方で、4月下旬になってもプリント課題はおろか、教科書さえ配布されていない自治体もあったのです。
現在は子供たちの「学びの補償」を守るためにも、各都道府県の首長が牽引し急ピッチで進められているようですが、もし転校(親の転勤による)したら、進んでいる地域の勉強についていけるかという保護者の不安な声も見られます。

私立学校と公立学校の違いはどこに出る?
今回の新型コロナウィルス対策に関して言えば、私立学校と公立学校の差は対応の早さにみることが出来ます。
私立学校は、何事においても決定事項が学校単体で済むために、決裁してから実行に移すまでのスピードが速いのです。
そのため、以前からClassiなどのオンライン教育を併修していた私立学校では、すぐに授業を切り替える算段が取れましたし、初めて取り入れた学校でも比較的スムーズに軌道に乗せることができました。
ところが公立学校はなかなかそうは行きません。もちろん学校ごとに独立した方針を打ち出すことは可能なのですが、予算、決定権という壁があります。
公立であることが今回「教育のスピード」という点ではネックになったと考えられるのですが、それがひと月ふた月…と重なっていけば、私立との差がどんどん開いていくのは当然の結果ですね。
さらに家庭環境の違いが自宅学習時間の違いになる
さらに実際の家庭環境の差が、子供ごとの自宅学習の違いに出るのは当然だと考えられます。
これは公立・私立に限ったことではありませんが、まずは条件として家庭内にインターネット環境やデバイスが整っているかどうかがあります。
この場合、実際私立校の方が援助の手を差し伸べるまでの時間が短い。
というのも、やはり決定するまでの組織としての手続きが、私立校の方が短いのです。
実際、とある私立高校では、WIFIなどが家庭内に整っているかどうかの確認・そして配布(貸与)まで、1週間ほどで完了したとの報告もあります。
未だ実行にすら至らない公立高校が多いなかでの、このスピード感は、差が出てしまうのも仕方ないとさえ思えてきます。
家庭学習時間の差は、インターネット機材等の問題だけではありません。家庭内で静かに勉強が出来る環境があるかどうかにも関係があります。
学習に対する家庭の理解度・本人の学習意欲・そもそも家庭が居場所として安全な場所であるかというセーフティネットとしての役割も問われています。
学校という場所に行けば、みんな等しく同じ条件で学ぶことが出来る。だからこそ、学校という場所がある。
今は感染防止という仕方がない状況ではありますが、やはり足並みを揃えた環境が整わないうちに見切り発車のような形でオンライン学習を始める以上、格差が出てくるのは必然と言えるのではないでしょうか。
公立と私立の足並みをそろえる方法はあるか
もう開始してしまった以上、格差があることは事実ですが、差を埋める方法は「時間・期間の延長」しかないと思われます。
学習範囲は全国一律なので、年度の期間を伸ばし9月新学期にすることによって、公立校が時間的な猶予をもらうということです。
私立校の生徒がどんどん進み余った時間で復習の時間が増えることにはなりますが、オンライン授業がないまま立ち止まっている公立校が、急ぎ足でもシラバス通りの内容を消化するには、9月新学期制度の導入が一番可能なのではないでしょうか。
そうは言っても、公立校の生徒にも出来ることはあります。
それはもちろん現段階までの復習です。
特に受験生の学年は、もはや授業で夏休みが無くなるのは必須なのですから、「今が天王山」ということを肝に銘じて、いま学習を進めることを、学校側はきちんと伝えて欲しいと願います。