新型コロナの影響で、日本中の学校が丸2カ月一斉休校なった2020年春。
未曽有の事態に、生徒児童そして保護者達は不安を募らせていました。
そんな中、学習の遅れを取り戻す対策の一つとして、4月28日の萩生田文科大臣の会見の中で9月入学新学期が現実になるかと思われる発言が出てきました。
また後を押すように、全国の17知事が9月新学期を政府に提案する事態に発展。日本の9月新学期案が思いがけず浮上したのでした。
9月新学期案のメリットとデメリットがわかる
具体化してきた9月新学期案

いつもの定例会見では、9月新学期案に対する明言を避けてきた萩生田門下大臣ですが、あれ?と思わせる発言をしたのは、4月28日会見最後の質問への答弁です。
「(9月入学新学期案について)文部科学省の中で完結できる課題については、すでに整理が出来ています。あとは他省庁や他の業界団体の皆さんと、静かな環境の中でいろんな意見交換を今続けているところですー」
今日の会見では「9月入学説はテーマとしてシュミレーションはしている」など、だいぶ踏み込んだ答弁をしていたが、この一言で予測が現実味を帯びました。
知事会の中でも9月新学期案が挙がっている事にも言及し、
「知事会の皆さんからのみなさんからこういうご意見が出ることも決して否定はしませんし、ある意味エールだと思って受け止めたい」としながら、
「莫大な事務作業を、この際オールジャパン一丸となって、子供たちの学びを確保するためには、これしかもうないんだと本当に一緒に考えて頂けるのであれば、一つの大きな選択肢になってくる」と言葉を結びました。
越えなければならないハードルとは

実はこの9月新学期案は学校だけの問題ではありません。
例えば義務教育の小中学校が9月新学期になったとしたら、高校入試も変わらなければ、当然半年間のブランクが出来てしまう。
高校が変わらなければならないなら、大学も同様です。
さらにその先は就職活動も変わるということになり、企業の受け入れ態勢も変える必要が出てきます。
当然保育園・幼稚園も同じ問題が起こります。特に保育園に通う子供は保護者が日中勤務のために、3月卒園から半年間の保育の受け皿を作らなければなりません。
これは文科省だけで完結する問題ではなく、社会全体に影響を及ぼすものとなります。
萩生田文科大臣は、”社会全体の各方面との調整が極めて必要であり、学校の教育評論家各方面だけが勇ましく決断すれば出来る、という単純な問題ではない”としながら、社会全体で同じカレンダーを共有できるのかどうかがカギとなることを示しました。
具体的には、
- 2年度にまたがる学校運営問題
- 自治体の会計年度はどうするのか
- 国や総務省はどうするのか
- 保育園の厚労省はどうするのか
- 就職に関して経済産業省はどう考えるのか
などが検討される問題となりました。
9月新学期スタートのメリット

今回のコロナ騒動で思いがけず浮上した9月新学期案でしたが、今年度に限らずに9月新学期案にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
実は、国際社会の先進国の中で四月スタートの国は数えるほどしかありません。
以前から構想されていた課題であることから、グローバル社会と年度開始時期を合わせる意味では、今回をチャンスと捉える向きもあります。
- 世界標準の入学卒業の時期になる
- 海外と同じ新学期なので留学しやすくなる
- 海外から学生を受け入れやすくなる
今年度に限って言えば、以下のような理由も付加することが出来ます。
- 休校で出来なかった入学式や各種大会を改めて開催できる
- 授業時間の取りこぼし少なく学力が維持できる
立ち消えとなった?9月新学期案

実際問題として、9月新学期案を実現するには越えなければならないハードルがいくつもあります。
改革するには、日本の社会通念としての機能をすべて塗り替えるくらいの大きなチカラが必要です。
桜の下で卒業の寂しさに泣き、入学の喜びに沸いた日本人のアイデンティティにも後ろ髪をひかれつつ…
まだまだ9月入学案は決着を先延ばしにされそうです。