司書になるには

司書カリキュラムは2012年に刷新。以前の資格は使えるの?

2012年は、図書館にとって改革の年でした。
その一つが「司書資格のカリキュラムの刷新」です。
資格を取る時に勉強する科目が変更されたのです。
どのように変わったのか、以前の資格は有効なのか見てみましょう。

司書のカリキュラムが2012年にリニューアル

個人的な事になりますが、私が私立高の学校司書に就いたのは大学卒業15年
希望して、県の新人学校司書研修(高等学校図書館勤務)を受講しました。

ひと回り以上若い方々と一緒に受講して何より衝撃だったのは、自分の年齢の再確認よりも法の改正司書資格のカリキュラムが刷新されていたという事実です。

法の改正とは、学校図書館法のことです。
2012年に司書教諭の設置の義務
2015年に学校司書(学校図書館担当事務職員)の設置努力が明文化されました。

司書教諭については今まで先延ばしにされてきましたが、いよいよ義務という言葉がついたのは学校教育が成熟してきた証です。
それはそれは大変に喜ばしい。

司書については、設置義務化の一歩手前まで来ました。
学校司書養成のカリキュラムが充実してきたので、設置義務化されるようになれば「常勤」雇用と「資格」が活きる職場になると思います。
とてもとても喜ばしいことです。

しかし、最も衝撃だったのは「2012年」の司書養成科目のリニューアルでした。
調べてみると、同じ科目であっても以前と単位数が違っていたり、統廃合により科目名が変更され、新しい科目も出来ています。

新カリキュラムを科目別に見てみよう

科目全体の構成が変わった

旧カリキュラムでは14科目20単位でしたが、新カリキュラムでは単位数が増え13科目24単位になりました。
単位数が増えたので、講義等の時間がその分多くなります。

旧カリキュラム(300~360時間)
講義11科目 16単位 240時間
演習 3科目     4単位 60-120時間

    ↓

新カリキュラム(360~465時間)
講義11-9科目 20-18単位 300-270時間
演習・実習2-4科目 4-6単位 60-195時間

※講義:1単位15時間、演習:1単位15-30時間、実習:1単位30-45時間とする。
※選択科目で何を選ぶかにより時間数が変動する

必修科目が分けられて3区分になった

旧カリキュラムは必修科目は各々が独立した科目設定でしたが、新カリキュラムでは3つに区分されます。

<基礎科目>
生涯学習概論
図書館概論
図書館情報技術論
図書館制度・経営論

<図書館サービスに関する科目>
図書館サービス概論
情報サービス論
児童サービス論
情報サービス演習

<図書館情報資源に関する科目>
図書館情報資源概論
情報資源組織論
情報資源組織演習

選択の科目が増えた

旧「図書及び図書館史」→新「図書・図書館史」
旧「資料特論」→新「図書館情報資源特論」
上記の2つがほぼ同一内容(読み替え可能)で、あとは新しい科目になります。

<新カリキュラム選択科目>
図書・図書館史
図書館情報資源特論
図書館基礎特論
図書館サービス特論
図書館施設論
図書総合演習
図書館実習

ちなみに
概論とは全体を通した内容の要約、
特論とは中~上級者向けの講義や特別な講義、
演習とは練習問題を通して講義や実習で学んだことを総合的に学習すること、
実習とは講義の内容を実際に確かめることにより理解を深めたり、訓練により技術を習得する学習方法のことです。

司書に関する科目の「新旧比較表」

では具体的に、新旧科目の比較です。
(「読み替え」とは、旧科目に相当する新科目の照らし合わせのこと)

科目の読み替え
旧科目(経過科目) 単位数 現行科目 単位数
生涯学習概論 1 生涯学習概論 2
図書館概論 2 図書館概論 2
図書館経営論 1 図書館制度・経営論 2
図書館サービス論 2 図書館サービス概論 2
情報サービス概説 2 情報サービス論 2
児童サービス論 1 児童サービス論 2
レファレンスサービス演習 1 情報サービス演習※1 2
情報検索演習 1
図書館資料論 2 図書館情報資源概論 2
資料組織概説 2 情報資源組織論 2
資料組織演習 2 情報資源組織演習 2
専門資料論 1 図書館情報資源特論 1
選択科目の単位※2 選択科目の単位※2

※1 読み替えるには、「レファレンスサービス演習」「情報検索演習」両科目の修得が必要。
※2 既に修得した経過科目の選択科目の単位は、現行科目の選択科目の単位とみなす。これは個々の科目の読み替えではなく、選択科目として修得したことになる。また、経過科目の「図書及び図書館史」及び「資料特論」は,それぞれ現行科目の「図書・図書館史」及び「図書館情報資源特論」とほぼ同一であるため、重複して受講することはできない。つまり、経過科目「図書及び図書館史」を修得済みの者は「図書・図書館史」を、経過科目「資料特論」を修得済みの者は「図書館情報資源特論」を新たに修得しても資格取得に必要な選択科目2科目とはみなさない。

2011年以前の資格はどうなるの?

結果的に、「資格に有効期限はないので、2011年以前の資格は使えます!」

ただ科目名からも分かる通り内容に変更点があるので、再教育は必要だと感じます。探してみたところ、最近は「学び直し」の名称で司書資格所有者向けの講座がありました。

聖徳大学『司書資格を既にお持ちの方のための「 司書学びなおし講習(履修証明プログラム)」』
松本大学松商短期大学部『司書学びなおしコース(司書資格所有者)』
桃山学院大学『司書過程修了者のための学び直し講座』

その他にも既取得者として以下のような勉強方法があります。

  • 全国図書館協会の研修に参加する
  • 全国図書館協会の講演会を聞く
  • 全国図書館協会が勧める参考書で学習する
  • 地域の図書研究会や司書部会の勉強会や研修会に出る

司書の資格として2011年以前のものは有効ですので、上記のような勉強会で新科目を学んで十分対応できる内容です。
受講した内容は、履歴書の職務内容あるいは資格の欄に「司書カリキュラム補講」あるいは「司書カリキュラム更新」と記載しておくとよいでしょう。

今後も学校教育の充実につれ、図書館業界にも新しい制度の導入や、制度の改正があるかもしれません。
どのような事態になっても対応可能なように準備を進めておくとよいですね。