『シリーズ中国の歴史④ 陸海の交錯 明朝の興亡』檀上寛・著
~「中華」を確立した明朝300年の歴史~
全5巻の中国の歴史シリーズの第4弾は、明朝が一体となって「中華」が確立する時代が描かれます。
広大な土地に大勢の人民がひしめく『巨大国家』がいよいよ誕生する時の、陸の対立・海洋の抗争。
世界史を勉強する時、各国の時間軸を合わせるのが大変だった記憶があります。
このシリーズは中国を4分割し「草原」「中原」「江南」「海域」からアプローチして描いているので、中国の履歴書が一望できる仕組みになっていて、非常にわかりやすい。
今なお近くて遠い国・中国を内側から理解できるシリーズです。
『マックス・ヴェーバー』今野元・著
~主体的人間の悲喜劇~
知の巨人と呼ばれるマックス・ヴェーバーの没後100年という節目に「新たなヴェーバー像」が誕生しました。
社会科学と言えばマルクス・ヴェーバー・カールマンハイム。決して易しい分野ではないし、一般教養としてはとっつきにくいと思われがちです。
でも本書はヴェーバーの生涯と、取り巻く歴史的背景から「人格形成物語」を描いているので、初心者も「ヴェーバーの世界」に入りやすいかもしれません。
なぜ闘争する人と呼ばれるのかも、人的解釈と合わせるとよくわかります。
同時期に出た、『マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家 (中公新書)』野口雅弘・著も合わせて読みたいところです。
『紫外線の社会史』金凡性・著
~見えざる光が照らす日本~
これほどまでに「人は見えざるモノに畏怖-期待と恐怖-の念を抱く」ものかと思わざるを得ません。
「健康」と「有害」の間で、世間の評価が反転、反転…
紫外線を中心に据えた、いや主人公にして時代を見ることで、人々の化学史も見えてくるとは面白い発想でした。
科学もまた、社会背景や文化に翻弄されているのだなあ、と思わざるを得ません。
『議会制民主主義の活かし方』糠塚康江・著
~未来を選ぶために~
議会制民主主義の活かし方――未来を選ぶために (岩波ジュニア新書)
議会制民主主義というと、若い皆さんは「自分とかけ離れた政治の世界の話」だと思う人が多いのはないでしょうか?
この世の大変なことはオトナが何とかしてくれる、そう思っているとしたら、それは違うかもしれません。
スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんは「このままでは将来の自分たちの世代が暮らす地球が壊れてしまう」と、地球温暖化を訴えるために抗議運動をして異議を唱えています。
香港でも「国家安全条例」からはじまり「逃亡犯条例」へと続くデモの舞台は大学です。自分たちの表現の自由や、民主主義が奪われることに体を張った抗議が行われています。
では日本はどうでしょうか?
「完璧な民主主義を持ちながら、政治的無関心な人の多さ」を批判する声もありますが、実際は変わってきています。
2020年大学共通テスト英語科目の「民間テスト導入」には教育格差の異議を唱えた高校生がたくさんいましたし、新型コロナの影響で学費が払えなくなった学生は窮状を訴えるために立ち上がりました。
もはや若い世代が政治の当事者としてメディアで報道される事がどんどん増えています。
政治や民主主義というとカタい話に思えますが、つまりは「当事者みんなで決める政治」をするために、どうすればいいかということ。
若い世代の変革の一歩は日々の暮らしの中にあることを、この本は教えてくれます。
PICK UP『繊細すぎてしんどいあなたへ』串崎真志・著
繊細すぎてしんどいあなたへ――HSP相談室 (岩波ジュニア新書)
繊細なことは、多感なこと。それは決してマイナスなことではないよと、背中を押してくれる本です。
繊細な人も、そうでない人も皆で共有できる知識の一つではないでしょうか。