新型コロナで国民全員が自宅から出られない状況は、子供たちに光と影を投じました。
国民全員が「家族」という囲いの中で生きざる得なかったこの三か月、それぞれの家族の良い部分は強くなり、悪い部分はますます悪化させる結果になったといいます。
コロナはいったん下火になりましたが、これからが本当の意味でいろんな問題が浮き彫りになるのかもしれません。
この記事ではルポライター・杉山春さんにスポットを当てて、杉山さんが見つめてきたテーマ「人と繋がることの意味」を中心に著書を紹介します。
コロナが家族に与えた影響
新型コロナにより様々な自粛がとられるなか、子ども達が置かれている状況は思ったより深刻な事態になっていました。
社会ではリモートワークが進み、メディアでも在宅勤務で育児と仕事の両立への悲鳴が多く取りあげられていましたが、声を上げることが出来るならばまだいい。
本当の弱者は、声無きところに存在します。
「学校」という行き場がなくなることで、確保されていた食事(給食やこども食堂)がなくなる子供、家族の虐待やネグレクトから逃れるセーフティがなくなった子供、教育の機会(ネット環境等)を失った子供…
これらの子供たちが大声で「助けて!」と叫ぶことができるでしょうか?
出来ません。
そう、声は届かないのです。
ましてや時期が「非常時」。
同じく生命の危機に瀕している状況なのに、未知のウィルスと比較されれば飛んでしまう声になってしまうことが懸念されます。
その事態に非常に危惧を覚え、自身も子供たちの支援に携わっているルポライターが杉山春さんです。
今回はあさイチにスペシャルインタビューでご出演されています。
杉山さんがずっとテーマとして見つめている「人と繋がること」とはどんなことなのでしょうか。ヒントとなる3冊の著書をご紹介します。
『ルポ虐待ー大阪二児置き去り死事件』
さまざまな当事者に丁寧に取材して書かれているので、読んでいて事件の核心について深く考えることができるのではないでしょうか。
虐待事件そのものの酷さは酷さとして、加害者の生育歴を丁寧に取材でなぞっていくと、彼女の背景にあるいろいろな事が彼女を歪ませていたことがわかってきます。
犯罪者に対して激しい批判ばかりが目立つことが多い世の中で、杉山さんのルポは事実を記す道しるべのように感じられます。
この事件はなぜ起きたのか。
そして同じことが繰り返されないために、社会は何を変えなければならないのか。
事件を止めるための「人との繋がり」とは。
辛い事件に背をむけたくなる内容ですが、目を逸らさずに受け止めたいルポタージュです。
『幻想家族ー「ひきこもり」から問う』
この本に出てくる実際のひきこもり当事者たち。
一人一人の内面に実に鋭く迫っていて、読んでいて胸に迫るものがあります。
ひきこもりが思春期の若者だけの問題ではなく、長期化して年齢が上がり、中高年のひきこもりも社会問題として取り上げられることが多くなりました。
著者の「既存の価値観を内面化し、自己点検を繰り返し、その内面化した価値観に合わない自分自身が社会に漏れ出すことを必死になって防いでいる」と捉えたことに、「ひきこもり」の多面性を見た気がします。
内なる価値観を作り上げる、時代の常識、それおぞれの過程が引き継いでいる価値観。
多くの人はその価値観に違和感を覚えた時に悩み、抗い、そして脱皮し自立してゆきますが、そうならないこともまた多いのも事実。
当事者やその家族だけでなく、社会全体が「引きこもり」という状態を正しく認知できるように理解を深められる一冊です。
『自死は、向き合えるー遺族を支える、社会で防ぐ』
自死は,向き合える――遺族を支える,社会で防ぐ (岩波ブックレット)
丹念に取材され、丁寧に寄り添った立場で書かれた本だ。
最初に読んだ時に、そう思いました。
「自死」という言葉は、自分に関係して初めて本当に重みを持ち始める言葉です。改めて自死という領域についての全体像、社会の中での位置づけについて考えさせられました。
重く敬遠されがちなテーマですが、ブックレットなのでいい意味でコンパクトにまとまっていて読みやすくなっています。
「自死は、向き合える」というタイトルそのまま、読後に残る余韻の意味をしっかりと考えたい本です。
子どもたちの支援「ホットミールプロジェクト」
ホットミールプロジェクトは寄付された食材で作った温かいご飯を無料で届ける活動。
上記のFacebook本文中にも杉山さんとの関係が書かれています。
また6月19日(金)のNHKの朝の番組「あさイチ」に、長年活動を見守ってくださり、応援、ご協力いただいている、ルポライター杉山春さんが出演されます。その際、少しだけCPAOの活動、ホットミールプロジェクトについてもご紹介いただけることになりました。
どうしても本を書く時には自分を追い詰めてしまうという杉山さん。自分を追い込んで、考えたことを言語化することで見えてくることがあるといいます。
そこで見えてきたのが「人と人との繋がり」。
誰でも、社会の公的なサービスも、ボランティアのサービスもぜーんぶ使っていい。使う権利がある。
誰かに繋がることで助かる命がある限り、杉山さんの活動が止まることはありません。