とうとう「学校司書」という言葉が、制度の中で歩き始めました。
「学校司書」って何?それは資格なの?職業として成り立つのでしょうか?
詳しく紹介したいと思います!
学校図書館に新しい動き
平成31年4月から、いよいよ本格的に「学校司書カリキュラム」が始まります。これは平成29年の教育職員免許法の一部改定に伴うことなのですが、簡単に言うと「学校司書として勤務する時に必要な知識」が定められたということです。
近年、学校教育と絡めて学校図書館の制度改革や施策が行われています。
平成9年 学校図書館法の一部改定により平成15年から司書教諭の必置
平成13年 子どもの読書活動の推進に関する法律
平成17年 文字・活字文化振興法
平成24年 第4次学校図書館図書整備5カ年計画としての財政措置
平成26年 学校図書館法に「学校司書」へ言及
それを受けて文部科学省が通知したのが「学校司書のモデルカリキュラム」です。
学校図書館が従来の読書活動の場だけにとどまらず、調べ学習など各教科で様々に使われることが増えたこと、それが「アクティブラーニング」にも関連付けられることから、一躍注目されることになりました。
しかし、活用への関心が高まっているにも関わらず、実は学校図書館は複雑な環境にあります。数年来議論されてきましたが、依然として学校図書館を支える人員の整備がなされてないのです。
学校司書は勿論、司書教諭もまた職務の明確化・養成研修不足の問題を抱えたままです。
学校図書館の重要性が増す中で、学校図書専門職の必然性が実は表立って語られいません。
「学校司書」に求められることとは
曖昧な立場「学校司書」の実態
いま学校司書は、資格に支えられていない曖昧な立場なのが実情です。
状況の一因として、教育者間の意識のズレや課題共有の難しさがあるでしょう。
もちろん学校教育において読書や図書が不要であると考える教育者はいません。
しかし、重要視の程度の差が顕著な分野であるといえます。
また学校や地域の状況の格差も関係しています。
実際には、司書免許の他に教員免許状、司書教諭の資格を持って職務にあたる学校司書がいる一方で、司書の資格・図書館勤務の経験さえ問わずに採用している現状が34.6%もあるということ(文科省「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議2016年報告」)。
しかもそれは学校司書の中の割合であって、全国の国公立学校の45%は未だ無人の学校図書館です。
司書教諭のみの学校図書館では、担当教員が図書の管理をし環境を整えなければなりません。専門従事ではないので、日々の授業との兼務になります。それでは図書館の充実など見込めないのも当然です。
学校司書に求められる2つの専門性
- 学校図書館の「運営・管理」に関する知識・技能
- 児童生徒に対する「教育」に関する知識・技能
学校図書館においては、学校教育法の中に「読書に親しませること」が規定されていること、またいわゆる学力の三要素として「基礎的な知識及び技能の習得」、「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力その他の能力の育成」、「主体的に学習に取り組む態度の養成」が挙げられています。その一端を学校図書館が担うとすれば、職務従事者として上記2点の専門性は当然でしょう。
文科省が発表「学校司書カリキュラム」とは
「学校司書」養成科目は10科目
※マーカーは学校司書のために新しく作られた科目
◎学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目
・学校図書館概論
・図書館情報技術論(司書必修科目併用)
・図書館情報資源概論(司書必修科目併用)
・情報資源組織論(司書必修科目併用)
・情報資源組織演習(司書必修科目併用)
・学校図書館サービス論
・学校図書館情報サービス論(司書必修科目の「情報サービス論」と「情報サービス演習」の履修をもって読み替えも可能)
◎児童生徒に対する教育支援に関する科目
・学校教育概論
・学習指導と学校図書館
・読書と豊かな人間性
新しく作られた科目以外は、司書課程と同じ科目です。
しかし半数以上の6科目が学校司書専用の科目ということを考えると、司書の中でも学校司書はより専門性を求められているということがわかります。
「司書」養成に必要な科目(平成24年4月改定)
比較として、司書課程の科目です。
学校教育以外の部分も包括しているため、履修には13科目が必要です。科目も、図書館の制度やサービス、施設論、生涯学習論と幅広い分野を網羅しています。
◎基礎科目(必修)
・生涯学習概論
・図書館概論
・図書館情報技術論
・図書館制度経営論
◎図書館サービスに関する科目(必修)
・図書館サービス概論
・情報サービス論
・児童サービス論
・情報サービス演習
◎図書館情報資源に関する科目(必修)
・図書館資源情報概論
・情報資源組織論
・情報資源組織演習
◎選択科目(2科目以上)
・図書館基礎特論
・図書館サービス特論
・図書館情報資源特論
・図書・図書館史
・図書館施設論
・図書館総合演習
・図書館実習
指定カリキュラムから見える「今後の学校司書」
現場のニーズに合わせた養成内容
新たに設置された科目を個別に見てみましょう。普段、学校司書として意識している内容ですが、明文化されたことによって理論立てて仕事が出来ます。
・学校図書館概論…学校図書館の意義、施設設備の管理について
・学校図書館サービス論…児童生徒及び教職員へのサービスの考え方、理解
・学校図書館情報サービス論…情報サービスの種類、それを提供できる能力育成
・学校教育概論…学校教育の意義と目標、教育行政に関すること、教育課程の意義及び編成の方法に関すること、児童生徒の心身の発達
・学習指導と学校図書館…授業における学習活動の支援
・読書と豊かな人間性…発達の段階に応じた読書活動の支援
現学校司書にこそ受講が必要
今回出されたカリキュラムですが、これらを履修しても「学校司書」という資格が得られるわけではありません(令和元年現在)。
むしろこれのみでは「司書」の資格にさえなりません。文部科学省が公表主体である以上準国家資格と認識は出来ますが、今の段階では「講習済み」という形にしかならないでしょう。資格認定が望まれますね。
そしてこのカリキュラムが最も必要とされているのは、実は学生よりも、現在学校司書の職にある者ではないでしょうか。
早い段階で、学校司書が勤務しながらも受講できる制度が必要です。支援制度が待たれますが、自分自身の為にも積極的に受講する心がけをするつもりです。