「図書館の本でコロナウィルスに感染したりしませんか?」という質問を聞かれることも多い昨今。
確かに図書館の本は皆が利用するものですし、手から手へバトンのように渡って使われるので不安になりますよね。
この記事では図書の本の感染リスクと、本のコロナウィルス除菌消毒する方法についてご紹介します。
紙とコロナウィルス
ウィルスは、一般的に時間が経つと共に死滅します。
付着する物の性質によって時間は違いますが、世界中のウィルスの不活性化の時間に関する研究から、現段階ではおよその時間を推測することができます。
アメリカ国立アレルギー感染症研究所の実験の結果によると、ウィルスが不活性化(死滅)するまでの時間は、紙の上では24時間・プラスチックでは72時間かかるとされています。また、WHOも日本の厚生労働省も同じ数字を見解としています。
ですから現在の日本では、コロナウィルスは紙の上では24時間しか生きることが出来ないという考え方が一般的な見方になっています。
図書館のウィルス対策
図書の本に紫外線除菌は有効でない?
ウィルス除菌でよく見かけるものには「紫外線による除菌装置」があります。
例えば病院などのスリッパを消毒したり、大浴場のヘアブラシを除菌したりと、沢山の人が共同で使うものの殺菌道具として活用されています。
では図書館の紙の本に利用することは出来ないのでしょうか?
その答えは『日本図書館協会資料保存委員会:図書館資料の取り扱い』に載せられています。
簡単に説明すると、紫外線による図書館資料への照射はおすすめできない、となっています。
その理由は以下の2つ。
・紙の劣化などの悪影響があること
・表紙だけでなく内側の全ページを全部殺菌するのはほぼ不可能
確かに一般的に紫外線消毒は有効であり、コロナウィルスにも効果があることは事実です。
しかし本は内側に何枚もの紙が連なっている形状のために、紫外線消毒機などによる除菌は難しいのですね。
また、当然アルコール噴射による紙の資料への除菌は、即刻劣化に繋がりますので、行うことが出来ません。
確実なのは時間隔離
こう考えていくと、一番確実な方法は「時間隔離」ということになります。
時間を経過することでウィルスが死滅する仕組みは、とても安全で、資料に与える影響もありません。
保管する場所さえ確保できればコストもかかりませんので、一番堅実で現実的です。
唯一の難点は、利用後の資料を一定期間の貸出凍結することになりますので、利用者を待たせてしまう事があるということです。
リスクと軽減の具体的対策
さまざまな実験結果や研究からの見解をみると、今の図書館で出来るウィルスへの具体的対策は3つあります。
1,返却された本は24時間以上隔離したあとに、次の利用者に貸し出すこと
2,返却された資料の表面がプラスティックのもの(フィルムカバーした本の表紙、CDなどのディスクカバー)は消毒液で清拭し、72時間隔離する
3,本を読む前・読んだ後には必ず手を洗うこと
この3つの対策をすることによって、確実に図書館本からの感染リスクを軽減することが出来ます。
しかしながら、どんなに頑張っても図書館側の対策には限界があります。もちろん手を抜くことはあってはなりませんが、100%安全と言い切れないのが辛いところです。
最終的な一番の対策は、個人レベルで本を読む前・読んだ後には必ず手を洗うことではないでしょうか。
万が一図書館の本にウィルスが付いていたとしても、手洗いすればウィルスを落とすことができるのですから、本が感染源になることを確実に防げるのです。
昔からの「読書前には手を洗おう・読書後にも手を洗おう」という教えは、貴重だった本を汚さずに使う意味合いだけではなく、自分を守る意味合いもあったのだなと先人の知恵に改めて頭が下がる想いがしますね。