学校図書館において、学校司書と司書教諭の存在は欠かせないものです。
学校あるいは雇用形態によって業務の線引きが多少違うことがありますが、ここでは文部科学省の定めた基準をもとに、わかりやすく説明します。
学校図書館法が設置根拠となる
学校図書館法(1953年)は、図書館が学校教育に欠くことのできない基礎的な設備であり、子供達の健全な発達と学校教育の充実に欠かせないものである、と定めた法律です。
この法律により、学校に学校図書館を運営する義務、司書教諭と学校司書の設置の法的根拠が出来ました。
初めは司書教諭の設置さえ曖昧な規定でしたが、1997年の改正においてようやく12学級以上の学校には司書教諭を置くことが義務化されました。
さらに2014年の改正では、各学校に学校司書を設置するよう努めることが規定されました。
ここに「司書教諭」と「学校司書」と分けて法が制定されていることからも、役目が違うということが明確にわかります。
学校司書と司書教諭の“定義”
学校司書
教員ではなく事務職員として採用され学校図書館に勤務する者は「学校司書」と呼ばれます。
専門的な知識、経験を有する学校図書館担当事務職員(文科省主催「第10回子どもの読書サポーターズ会議」)と呼ばれることもあります。
司書教諭
教諭として採用され、更に司書教諭の資格を持った者のなかで、学内で特に任命された者が「司書教諭」になります。
学校司書と司書教諭に“必要な資格”
学校司書
制度上に資格の定めはありません。
※採用時にそれぞれの実情に応じて、司書資格や司書教諭資格、教諭免許状、担当実務経験等を定めて募集することがあります。
司書教諭
司書教諭になるには、小学校・中学校・高等学校・または特別支援学校の「教諭の免許状」を取り、更に「司書教諭講習」を受講することで「司書教諭の資格」を取得できます。
現段階で教員免許しか持っていなくても、後から所定の機関で「司書教諭講習」を受けることで資格を得られます。
学校司書と司書教諭の“位置づけ”
学校司書
・職種 学校事務職員または必要な職員
・勤務形態 常勤または非常勤
・業務 制度上必須の定めはありません。
それぞれの学校図書館における事務を行います。
仕事の線引きは採用の条件で各々違うのが実情です。
司書教諭
・職種 主幹教諭、指導教諭または教諭
・勤務形態 常勤
・業務 学校図書館の専門的職務。
「学校図書館資料の選択・収集・提供や、読書活動に対する指導」を行います。
更に「学校図書館の利用指導計画を立案し実施する中で、学校図書館運営・活用について中心的役割」を担っていきます。
現場での実際の業務の違い
大まかな違いとしては、一般的には学校司書は判断や決済権を持たないような処理的作業を担い、司書教諭は立案したり予算決算といった責任を伴う案件を担当することになっています。
しかし公立学校に地方自治体職員が学校司書として勤務している場合は、学校図書や備品購入の計画・利用指導計画・読書活動に対する指導も含む学校図書館運営まで行います。公務の場合は、学校司書と司書教諭は業務が明確に分担されています。
ちなみに私は私学司書ですが、司書も図書や備品の購入計画立案・利用指導・読書活動の指導・授業で使う視聴覚教材の管理まで行っています。
最終的な決定権や責任の所在は司書教諭になりますが、共同活動という形で一緒に図書館運営にあたっています。
学校司書も司書教諭も目指すところは同じ
学校司書または司書教諭は、単に本の整理や貸し出しを行うだけではありません。
学校図書館は読書や学習活動の礎になり、必要な情報を提供し、知識や興味を深めるところです。
そして、その学校が最終学歴となる生徒達にとっては、『生涯教育に繋がる』場所でもあります。
司書も教諭も役割は違えども目指すところは同じ。
子供たちの未来のために教職員として学校教育に関わっている自覚を持ちながら、日々仕事と向き合う姿勢が大切であると思います。
また、学校司書の立場としては、司書教諭ではない「図書の先生」にしか出来ない活動はたくさんある!ということを強く言いたい。
先生という立場でないからこそ話せる、子供たちの本音があります。親しくなればけっこういろんな悩みを話してくるものです。
先生よりも近く、親ほど密接ではなく関われる大人という立ち位置は、今ではある意味貴重ではないでしょうか。
子どもたちが愚痴や悩みを言える大人が周りにいる環境は、意外に少ないと思うのです。
少しでも子供たちのために、学校司書がそんな位置になるよう心がけたいと思っています。