進路指導が具体的になってくると始まる「ガクチカ」問題。
「先生〜、本当にガクチカ無いんですよ」と、ため息つきながら話す生徒は少なくありません。
よくぞ言ってくれた、図書室で!!
毎年「それならまだ間に合うのがあるよ」で救われる生徒が何人もいます。
それでは、ガクチカ項目が埋まらないアナタに特別にお教えしましょう、司書オススメの「読書力」を。
結局”ガクチカ”って何?
高校3年間、部活に打ち込んだ人・生徒会で活躍した人、…そのまま素直に書けるなら困ったりはしません。
「学生時代に力を入れたこと」それがガクチカなわけですが、平凡に、フツーに過ごした自分には無いよ!ってなるわけです。
学生の立場からすると、とにかくなんか答えなきゃ、と焦って言えることを探してしまうはず…。
でもちょっと待って!
何故この質問があるのでしょうか?
あなたの学生生活を知りたいから?
あなたがどのように過ごしたか知りたいから?
それは半分しか正解ではありません。
答えは「受験者がどのように考え過ごして何を得たのかを知り、どのような人物か理解するため」です。
「何を得たか」が一番大切
どのように忙しく打ち込んだものがある生活をしていても、肝心なのは「何を得たか」です。
一生懸命に部活に励んだ、委員長として活動した。それは素晴らしい経験ですが、それで終わったのでは意味がありません。それではただ職務を遂行しただけに過ぎないからです。
その時何を考え、何を学び、何を得たか。つまりどのような意識で取り組んだのかが大事なんです。
せっかくの体験を熱心さだけで終わらせては、そこに学びは生まれません。成長もありません。
「〇〇という体験から◇◇を得た」と胸張れる事こそ、学生時代に力を入れたと言い切れるのではないでしょうか。
無いなら今から「読書力」を身につけろ!
そこで、「何も無いんです〜」な生徒です。
振り返って見れば1つや2つ、なんかエピソードトークにできそうなものってアリそうなのですが、聞いても熱心に続けたのはスマホゲームと、youtube鑑賞くらいで…っていう。
学生時代は終わったわけじゃない。だったら作ればいいんです。
でオススメなのが「読書力」なんです。
読書力とは?
コロナの流行もあって家時間が増え、以前から話題だった「読書の重要さ」が、世間でも取り上げられるようになりました。
読書の力を提唱して有名な方と言えば、脳科学者の川島隆太教授、国語学者の齋藤孝さん等です。
川島教授は脳トレで有名ですが、読書を通じて学力が伸びる因果関係を科学的に解説した本がとても面白いと評判になりました。
そして今回中心にご紹介するのは、齋藤孝さんの著書『読書力』です。
ここで斎藤さんは「本を読むことの意味」「読書の本質」について言及しています。
詳しくはぜひ読んで頂きたいのですが、シンプルにまとめると「読書とは自ら学び、探求すること」であると仰っています。
すなわち読書力とは、自ら学び、探求できる力を身につけること
読書する時に学ぶ意識を心がけることで、自分の興味を広げ、思考を鍛え、未来の自分を作る力にすることが出来るというのです。
誰でも出来る「読書」だからこそ
「読書」は、誰でも出来るコトです。
中には本を読むことが苦手だったり、集中が続かない人もいるかもしれませんが、内容を自分の興味に合わせたり、短い時間で区切ったりすれば誰もが読書を楽しい時間にすることが可能です。
誰でも出来ることだからこそ、誰もが意識しないやり方をすることがキモなんです。
ガクチカ=読書力を鍛えた!
どうでしょう?ちょっと賢そうじゃありませんか?
読書力のメリット
『読書力』=「読書すること」ではありません。
「え?どういうこと?」疑問に思った人、まさにソレです。その疑問こそ世間の反応、質問者の反応です。
その疑問への答えこそが、これから身につける『読書力』。
読書力は、読書を通して考える力をつけること。読書を通して学ぶ力をつけること。だから、ただ読むだけでは駄目なのです。
・どんな目的を持って読んでいるか?
・内容についてどう思ったか?
・その本から学んだことは何か?
オススメなのは読書ノートをつけること。1冊読んだら必ず考えをメモして、ノートを読み返す習慣をつけます。週末・月末ごとにノートを読むと決めるといいですね。
読書ノートのつけ方
読書ノートは手書きでも、PCでもどちらでもOK!
忘れないうちに書いておきたい派は、お気に入りの大きさのノートにササッと書き付けましょう。
市販の読書ノートもあります。
モチベーションを上げるためにオシャレなものもOK!
手帳を読書ノートにするのも手軽で素敵。
スマホや携帯に打ち込むと意外に続く。
ご自分に合った方法を見つけてみてくださいね^^
作文例:わたしのガクチカ
最後に、ある生徒の文章を紹介して閉めることにします。(本文ママではありません。大体の内容です。)
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高校2年生Yさん「わたしのガクチカ」
私が高校に入学したのは、タイミング悪くコロナが猛威を振るっていた2020年の春。
夢を持って新入生になった私を待っていたのはリモート授業でした。部活どころか、登校さえ出来ない。家の中で悶々と過ごす日々が続いていました。
そこで、このまま何もせずに高校生活が終わらせるわけにはいかない!と、私が選んだのは「読書」です。
ステイホームで読書を、と学校側が図書館の本を期限なしで何冊も借りられるようにしたことも大きな原動力になりました。
読書をすることに決めたものの、どこから手をつけていいのかわからなかったので、1年生の時はたくさんの本にふれることを目標にしました。自分に合う本や学びたいことを探るためです。
その成果もあり、1年生の終わりには学校の多読賞を取ることができました。そして、その中で初めてドキュメントの面白さに目覚めました。
2年生になった今はドキュメントやノンフィクションの作品を中心に読み、新書やブックレットにたくさん触れるようになりました。すると、自分の中で社会の仕組みや医療について知りたい気持ちが湧いてきました。
特に気になったテーマは子供の医療です。なぜなのだろうかと考えた時に、自分の幼少期の入院の体験に思い当たりました。本を読むたびに、あれはそういうことだったんだ、それは意味のあることだったのか、と読書からの知識の流入に圧倒されているうちに、今は看護の仕事についてみたいという気持ちも芽生えてきました。
2年間意識して続けてきた読書は、私の視野を広げて、新しい知識の入り口になってくれました。書き続けて2冊の読書ノートがその証拠です。
だからもし「あなたが学生時代に力を入れたことはなんですか?」と聞かれた時は、自身を持って「私のガクチカは読書です」と答えたいと思います。