受験対策

大学入試『eポートフォリオ』取り消しの原因は?クラッシー・スタディサプリ活用中の18万人はどうなる?

今年度から大学入試で活用されるはずだった、新システム『ポートフォリオ』が取り消しになる方向で、文部科学省が調整に入ったことが明らかになりました。

文部科学省は2020年6月30日に「大学入学共通テスト」のが威容を発表したばかりですが、ここにきて『ポートフォリオ』も運用中止の方向になり、新形態で進めてきた大学入試改革は混乱が続いています。

”大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省”

高校生に、学習した内容や部活動の実績を記録してもらい、大学入試で活用する新たなシステムについて、文部科学省は、これを運営する一般社団法人への許可を取り消す方向で調整していることが関係者への取材でわかりました。

大学入試の『eポートフォリオ』とは?

『eポートフォリオ』とは?

『eポートフォリオ』とは、生徒が自分で学習した内容や部活動の実績を記録し、その成長度合いを大学入試で活用する新たなシステムです。

現高校3年生が高校1年生の時からシステムが始まり、利用中の生徒はスマホやパソコンを使って学習状況や部活動状況を入力して記録している最中でした。

教員側にもおおむね好評で、生徒指導の際に生徒の学習成果をインターネット上に記録できるので、双方での情報共有がしやすくなるといったメリットがあります。

普及の理由は?

何よりも、eポートフォリオのデータを調査書と連動させ、大学入試に利用できると発表されたことが一番の普及の理由です。

2020年度からの大学入試改革で重視される事項のひとつに「生徒自身が主体的に学ぶ態度」があり、それが『eポートフォリオ』の導入の追い風となりました。

このシステムは約18万人の生徒が利用していることなどから、大きな影響が出るのではないかと心配されています。

運営の実態は?

『eポートフォリオ』は「JAPAN e-Portfolio」というシステムの下に運営されています。この「JAPAN e-Portfolio」システムは、もともと国が大学入試改革の一環として、主導して開発を進めました。

目的は、これまでの筆記試験で測定が困難とされた”生徒の主体性”の評価ですが、運営は去年から一般社団法人「教育情報管理機構」に任されています。

この機構は東京駅に隣接するビルに事務所を構え、会長は金沢大学の山崎光悦学長、役員に国立大学協会の会長となっている永田恭介筑波大学学長らが名を連ねています。

『eポートフォリオ』は実際どのように活用されていた?

今や私立高校を中心に、学校側が契約して利用するクラウド型ICT教育『classi(クラッシー)』や、学校が団体契約して利用するオンライン講義の『スタディサプリ』などの活用がどんどん進んでいます。

加えて2020年3月から新型コロナウィルスによる休校対応を機に、オンライン授業として高校全体で導入する動きが加わり、加入者が大きく増えました。

この『classi(クラッシー)』『スタディサプリ』の中などに連携して『eポートフォリオ』があり、今や利用人数はおよそ18万人に上ります。

『classi(クラッシー)』の場合

引用:classi公式ページより

『classi(クラッシー)』はベネッセホールディングスとソフトバンクグループ株式会社の合弁子会社で、情報通信技術を活用した教育事業を手掛ける企業です。

ソフトバンクのネット構築のノウハウと、ベネッセの教育知見を生かし、学校教育におけるICT活用の推進を目的として設立された、いわばその方面のプロ同士がスクラムを組んだ教育事業。

クラッシーオリジナルの講義や教員が作成した講義動画を流すことが出来、各オンライン講義の後には小テストが義務付けられ、基準以上の点数を取らないと次に進むことが出来ない仕組みが組み込まれています。

そしてもちろん『eポートフォリオ』機能もあり、日々の学習記録を含め、部活や学校活動などを記録することが可能です。

保護者にもアカウントが割りふられているので、学校からの知らせを受信したり、子どものテストの成績を見たり、担任の先生との双方向からのやりとり、親からの欠席連絡など、最強タッグのなせる技が存分に行き届いている印象です。

『スタディサプリ』の場合

引用:スタディサプリ公式ページより

『スタディサプリ』は、リクルートホールディングスの子会社リクルートマーケティングパートナーズが運営しているインターネット予備校。

以前は個人で契約する場合が多かったが、最近は学校が団体で申し込む形態が増えてきています。

それというのも、学校が契約すると「とても」使える機能がついてくるからです。

学校団体契約のメリット
  • どれだけ視聴したかなど、スタディサプリ内の生徒の情報を学校が連携できる
  • どんな活動をしたか、記録できる「活動メモ」が取れる
  • 「学びのデータ」で『Japan e-Portfolio』と連携した活動記録が取れる
  • 学校からのアンケートに使える

『eポートフォリオ』の問題は何か?

『eポートフォリオ』は今年度の大学入試から本格的に導入される予定でしたが、以前からシステムが問題視されていました。

それというのも、機構のシステム運用を教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っています

しかし生徒がポータルサイトを利用する時には教育企業大手の「ベネッセコーポレーション」が発行するIDを必ず取得しなければならず、教育現場から、「企業への利益誘導につながるのではないか」などの懸念があがっていたことが原因の一つとみられています。

萩生田文部科学大臣も会見の中で今年2月運用の見直しについて言及し、文部科学省が機構に是正を要請していた経緯があります。

また、実際に入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めないことも問題だと言われています。

受験生の今後の見通しは?

国が進めてきた2020年の大学入試改革は、大きな柱だった英語の民間試験と記述式問題の導入がすでに見送られるなど、未だ混乱が続いています。

NHKのニュースサイトの中で、大学入試に詳しい東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は、

「『主体性』を測ることは、部分的には可能かもしれないが、生徒のあらゆる活動が入試を意識した高校生活になってしまう懸念が生じる。そういったシステムが本当によいのか、生徒の大事な個人情報を適切に管理できるか、議論が甘かったのではないか」
(引用:

と指摘しています。

やはり、生徒の成績や住所などの個人情報・入試で扱う公共性の高い仕事を、民間に運営させるのは容易なことではありません。入試改革の柱と言われた制度が中止や延期になったことを文科省にはもっと精査に検証して欲しい、という要望が各方面から上がっています。

今年度の受験生は、新制度の変更や中止、加えてコロナ禍に翻弄されてきました。

できるかぎり不安を取り除けるような丁寧な説明と、受験生が不利益にならないような体制を整えることが、いま最も必要とされています。