学校図書館は、どこも同じと思っていませんか?
NO、NO!とんでもない!
図書館こそ最も学校の自由度が高く、正直いうと手を抜ける場所なんです。
特に私学の場合は顕著です。
中にいる人間が言うのだから間違いありません。
図書館を見れば、学校の教育に対する熱意がわかります。
- 今まで、どんな教育をしてきたか
- 現在、何に取り組んでいるのか
- これから強化する分野は何か
これらの事がわかってしまうのですから、学校図書館は本当に侮れません。
中高6年間過ごす学校環境は在学中に変えることの出来ない大事な問題です。
習熟度が上がるも下がるも、すべては環境が育む結果と言っても過言ではありません。
ここでは学校図書館がなぜ大事なのか、学校図書館の見学ポイント5つを紹介します。
学校図書館の質を見抜くポイントとは?
近年「アクティブラーニング」が広く知られ、教育現場での図書館の重要性がようやく浸透してきました。
これは、従来の知識詰込み型よりもこれからの教育は知識を活用し運用する力が大事だと、注目された結果でもあります。
今まで読書の場としてだけの認知だった図書館が、「情報センター」「学習センター」「読書センター」と公に位置付けされたのは2016年ですが(学校図書館ガイドライン)、昔から教育理念として「図書館の重要性」の認識を持っていた名門校は多数あります。
学問に限らず「生きるチカラ」として自分で課題を発見し、調べ、解決するという能力の基礎を養うことは、人生で最も大事なことではないでしょうか。
だからこそ”直接知識と出会える場”としての図書館のクオリティが、その後の学校生活の質に密接に関わってきます。
実際、予算配分も学校によって全く違います。
公立校では授業料として納める金額の中で「図書費」の割合が一律決まっていますが、私立校の図書の購入費用は様々に設定できるので、教材費や視聴覚費、進路資料費など、一つの品目に限らずに含まれる場合もあります。
蔵書数だけに注目すべきではありませんが、本の数は過去からの積み重ねですので一つの基準と考えるのは間違いではありません。
公立学校の平均蔵書数は中学校が1万2000冊、高校が2万7000冊ということを念頭に置いた上で、次に学校見学で図書館の質を見極めるポイントを5つご紹介しましょう。
ポイント1・学校図書館の位置を見る
昔から図書館を重要視している名門校は多数ありますが、最近の風潮としてさらに一歩進めて、建物の「場所」を注視する学校が増えています。
- 生徒昇降口のすぐそばに設置
- 学校の中央に吹き抜けで設置
- 日当たりの良い明るい場所に設置
- カフェや食堂と併設
- 階段不要の一階に設置
設置場所の基準がわかりますでしょうか?
実は、すべてに共通するのは「生徒たちの利便性」です。
いかに生徒たちを図書館に誘導するか、通いやすい導線を作るか。
図書館の存在がより身近に感じられる場所であったり、毎日通る場所であったり、居心地のよい場所であったり、面倒を感じずに通える場所であったり…様々な工夫が感じられます。
その学校により生活や活動が違うのでどの場所が一番良いとは言い切れませんが、場所は建学者の意思の反映です。全体像と図書館のバランスを見ると面白いと思います。
ポイント2・学校図書館の本の配置を見る
図書館の本や棚の配置は、通う生徒がどのように図書館を利用するかがわかります。
幾つか例をあげて見てみましょう。
入ってすぐにラウンジや書見台がある
図書館の入り口付近にちょっとした休憩所的な椅子(ラウンジ)や、立ったまま雑誌や新聞を読む書見台がある学校では、雑談や息抜きとして利用する生徒が多いことがわかります。
これは悪い使い方ではありません。
きっとこの図書館には、短い時間や気分転換の時にも気軽に立ち寄れる、良い雰囲気があるのではないでしょうか。
図書館は長時間利用だけが推奨される場ではありません。訪れる頻度も大事です。
全体がオープンに見渡せる
閉鎖された空間はなかなか入りにくいもの。
閉鎖とは反対のガラス張りであったり、中央部吹き抜けのカベの無い図書館は、教育の自由度を感じます。
図書館への出入りに、出来る限りハードルを下げ自由にアプローチできるということは、生徒にとってはとても嬉しいことでしょう。
学ぶことに気軽に接して欲しいという、学校からメッセージが見て取れます。
個別空間が多い
個別空間の多さは、自習する生徒の多さを語ります。
仕切りがある個別空間は学習に没頭できる場所です。
私の経験上、個別空間でわざわざ寝たり遊んだりする生徒はいません。机の数だけ、熱心に自学する生徒がいるということを物語っています。
ただ最近は「自学室」を別に設置して、図書館学習と区別する動きもありますので、学習机の設置が無い場合は聞いてみると良いでしょう。
企画展示の場所が広い
特集コーナーなど企画展示の場所をたっぷりとっている学校は、活動としての読書を学校全体で取り組む姿勢がみてとれます。
生徒主体の活動「図書委員会」や「文芸部」などの場合は、そのまま生徒の読書傾向がわかります。
時に、生徒ではなく学校(司書や司書教諭)主体で企画している場合もありますが、その場合は学校の目指す教育の方向性がわかるでしょう。
特集コーナーが図書館付近ではなく、昇降口やピロティなど離れた場所のこともあります。いずれにせよ、教育に対して熱心な取り組みの姿勢がわかります。
ポイント3・学校図書館の特集を見る
学校図書館に限らず、図書館では「企画もの」「展示もの」など特集を組むことがあります。
これは利用者が様々な分野にアプローチするための「興味を持つ機会」にもなり、企画そのものが「知識・情報」にもなるので、多彩なテーマを掲げることができます。
しかしながら、企画展示をする時には対象者の興味や習熟度に合わせることが必須なので、特集そのものがイコール利用者のレベルということになります。
同じ「ノーベル賞」というテーマでも、『吉野彰さんが開発したリチウムイオン二次電池の基本概念』という自然科学系になる学校もあれば、『ノーベル文学賞に選ばれた作品展示』や『ノーベル授賞式のストックホルムはどこの国?』というテーマになる学校もあるでしょう。
その特集の切り口を見ることもまた、その学校を知ることになります。是非注目していただきたいポイントです。
ポイント4・学校図書館の雑誌を見る
殆どの図書館では数種類~二十種ほどの雑誌を定期購読しています。
「ナショナルジオグラフィック」や「ニュートン」「アエラ」「ダ・ヴィンチ」などが定番の雑誌ではないかと思いますが、その他の専門性の高い雑誌が学校の読者傾向です。
スポーツなど部活動に熱心な学校であれば「月刊陸上」「月刊バレーボール」「月刊ベースボール」…となるでしょうし、理系好きな生徒が多ければ「日経サイエンス」や「科學」「化学と工業」などが並ぶかもしれません。
雑誌は読者層が如実にわかる分野。短時間でもタイトルを見るだけでわかるので、お勧めです。
ポイント5・学校図書館の司書を見る
図書館運営に資本は大事ですが、蔵書や本棚以外で最も重要な図書館の要とは何だと思いますか?
それは図書館に勤務する職員「学校司書」です。
学校司書の人柄や能力で、図書館に活気が出たり、斬新なアイデア企画がつい図書館に足を運びたくなる場所になるなんても事も。
入った時の明るい挨拶や楽しげな雰囲気、清潔で居心地の良い空間であることも図書館の質の内なのです。
たとえ図書の貸し出し返却が自動機械化されようと、それだけでは図書館という機関は成り立ちません。無人でシーンとした図書館に、誰が通いたいと思うでしょうか?読書する意欲が湧くでしょうか?
教育とは、熱意の橋渡しです。
学びたいと思う人がいて、それを手助けしたいと思う人がいるように、図書館も読みたい・学びたい人が使いやすいように援助する人がいる。
教員と同様にその役割の一端を担うのが、学校司書なのだと思います。
まとめ
学校図書館は、その学校の教育の歴史だと思うのです。
今までどんな教育をしてきたかは、棚に並ぶ古い書籍のタイトルを見ればわかります。
現在なにに取り組んでいるのかは、生徒が返却したばかりの本が並ぶキャスター付き書架を見ればわかります。
そして、これから強化する分野は何なのかは、カウンター手前に目立つ棚に飾られている本、あるいは図書館便りの新着図書の傾向でわかります。
学校の方針に従って長年購入を続けてきた蔵書には、色濃く校風がにじみ出てくるのです。
それは、その学校の教育への情熱の他なりません。
学校図書館に一足踏み込んだ時に感じるそのオリジナリティこそが、学校の熱度と捉えて良いのではないでしょうか。
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